計画は家族3人が暮らす住まいです。
敷地は、東側と南側に茶畑と美しい山並みが広がり、西側には寄り添うように母屋が隣接、北側には静かに通る道があり、自然に囲まれた静かな環境に位置しています。
計画にあたり望まれたことは「安心して暮らせること」「和を感じること」「高い性能と美しいデザイン」「メンテナンスの頻度が少ない」ことでした。
母屋東側にはLDKがあり、その日当たりと通風を損なわないように、建物は軒高を抑えたL型の平屋としました。平屋とすることで、周囲の風景の中に溶け込み、茶畑と山並みといった自然に視線がいき、屋外と室内のつながりを感じられるようになっています。建物の屋根は軒の深い切妻屋根とし、大きく張り出した軒が外壁を雨風から守りながら、夏の強い日差しを遮り、雨の日でも窓を開けて風を感じることができます。また、南側の軒下スペースにはデッキがあり、母屋LDKとつながるテラス窓にも隣接しています。このデッキは、晴れた休日の朝には、ここでコーヒーを片手に雑誌を読んだり、子どもたちが遊んだり、夕暮れ時に家族でテーブルを囲んで食事をしたり、友人、祖父母とバーべーキューを楽しんだりと、もうひとつのリビングのように使えます。外と内が自然につながる場です。
設計では、周辺環境や外構のデザインを含めた環境デザインの要素も大切にしました。居間の南面には幅3.8mの大きい開口を設け、冬にはあたたかな日射をしっかりと取り込み、軒の出や窓の配置を工夫することで、夏の日射の遮蔽と通風を確保。断熱性能・光、熱・通風のバランスをシミュレーションしながら丁寧に進め、居心地のいい室内環境を目指しました。
内装の仕上げには桧無垢材を床・天井に用い、障子を取り入れました。手触りや柔らかな光の反射、視覚的な落ち着きに配慮し、素材の色味はできる限り着色せず、経年変化を味わえるように工夫しています。また、既製品も適所に使いながら、素材の色味や質感を調整して、居心地の良い空間を目指して丁寧に設計しました。居間の窓からは茶畑越しに美しい山並みを望むことができ、その風景はまるで一枚の絵画のようで、暮らしに色どりを添えてくれています。ソファに腰を下ろし、テレビを見ながらも、ふと視線を外に視線を向けた時、ダイニングで家族と共に朝食をとるひととき等、何気ない日常の中に自然を感じることができる豊かな暮らしがあります。
この家は断熱等性能等級6(HEAT20 G2)、一次エネルギー消費等級6を取得。太陽光発電を備えたZEH住宅であり、火災に強い省令準耐火構造を採用するなど、高い性能を備えた脱炭素(GX)志向型で、性能面でも『安心』(命、健康、財産をまもる)して長く住み続けられる仕様としています。
設計の根幹にあるのは、年月を経ても古びることのない「美しさ」、また、何気ない日常の中で、光や風、季節の移ろい、家族の気配を感じ、心地よく、豊かな気持ちなれる空間を目指しています。そして、この住まいが、将来壊して建て替えるのではなく、必要に応じて改修や増築を重ねながら、子や孫へと住まいが継承されていくことを願っています。